I AM A LIAR
NOT FOR WEARING.
AN INTERVIEW ABOUT CREATION, TIME AND INTERPRETATION.
I AM A LIAR は、同じ学校で服づくりを学んだ2人によって、2024年に始まった。
アトリエで、海外で選び抜いた古布や、お客様から預かった思い出の品を素材に、1着ずつ制作している。
ミシンと手縫いを合わせて20を超える工程。1着の完成までにおよそ3週間。
すべて1点もの。
同じものを、と言われても、作ることはできない。
Q. I AM A LIAR という名前には、どのような意味がありますか?
名前が生まれたのは、学校を卒業する少し前のことです。
友人と2人で話しながら、僕は作りたいブランドのことを、まだ形にならない言葉のまま投げかけていました。それを友人がまとめて、「これはどうだ」と出してきたのが、この名前でした。
迷いはありませんでした。僕たちが作りたいのはこれだ、と。
単語そのものに、意味はありません。
「私は嘘つきです」
もしこれが本当なら、私は嘘つきなので、この言葉は嘘になる。
もし嘘なら、私は正直者なので、この言葉は本当になる。
本当とも、嘘とも決められない。答えの出ない問い。
それが、この名前です。
Q. NOT FOR WEARING. という言葉には、どのような意味が込められていますか?
着ることを否定したいわけではありません。
ただ、僕たちの作品を、衣服というひとつのカテゴリーに閉じ込めたくないんです。
服なのか、作品なのか。
美しいのか、醜いのか。
完成なのか、未完成なのか。
その境界線は、見る人によって異なるものだと思っています。
身につける人もいれば、作品として眺める人もいる。どちらでもない、まったく別の何かとして受け取る人もいるかもしれません。
そのどれもが、間違いではありません。
NOT FOR WEARING. は、作品の存在を「着る」という目的だけに限定しないための言葉です。
Q. なぜ、古いものや既に存在しているものを素材として選ぶのでしょうか?
既に存在しているものには、それまでに過ごしてきた時間があります。
誰かが着ていた時間、使われていた時間、傷ついた時間。そうした背景は、素材そのものに刻まれていると思います。
新品には新品の美しさがあります。けれど古いものには、新しく作ることのできない表情があります。
そこに僕たちが手を加えることで、過去と、今の僕たちの表現が重なり合う。
過去を消して新しいものを作るのではなく、過去を残したまま、その先にある別の可能性を探しています。
Q. 刺し子という技法には、どのような意味を感じていますか?
刺し子は、僕たちの表現の根底にあるものです。
1針1針、布に針を通し、糸を重ねていく。その繰り返しによって、布の表情は少しずつ変わっていきます。
ひとつの傷だったものが、針を重ねることで別の表情を持ち始める。強度だけでなく、見た目も、質感も、そこにある意味さえも変わっていく。
僕たちにとって刺し子は、単なる装飾や補強ではありません。何かを覆い隠すのではなく、そこにあるものと向き合い、新たな痕跡を重ねていく行為です。
1針ごとに何かが変わり、その積み重ねから、最初には想像していなかった姿が生まれる。
その変化そのものに、強く惹かれています。
Q. 襤褸、そして均一ではないものの美しさについて、どう考えていますか?
僕たちは、襤褸を最初から完成形として目指しているわけではありません。
刺し子を重ね、布と向き合い続けた結果として、襤褸という姿が現れる。そこが大切だと思っています。
傷やほころび、重なり合った布、揃わない縫い目。同じ素材を使っても、同じものは2度と生まれません。
それらを欠点として取り除くのではなく、そのものの存在として受け入れる。
均一であることや、整っていることだけが美しさではないと思います。人も物も、時間とともに変わっていく。その途中にある不完全さや矛盾の中にこそ、そのものだけの表情があるのではないでしょうか。
壊れたものを元に戻すことだけが修復ではない。傷を抱えたまま、新しい存在へと変わっていくことも、ひとつの再生なのかもしれません。
Q. 最後に、I AM A LIAR が目指すものを教えてください。
明確な完成形はありません。
僕たちが作るものに、ひとつの意味や価値を与えるつもりもありません。素材も、技法も、作品の形も、これから変わっていくと思います。
特定のメッセージを伝えたいわけでも、すべてを理解してもらいたいわけでもない。
同じ作品を見て、美しさを感じる人もいれば、違和感を覚える人もいる。何も感じなくてもいい。そこで生まれる感情や考えは、その人自身のものです。
僕たちはただ、まだ見たことのない表情や、まだ名前のない存在を生み出していきたい。
僕たちは定義しない。
僕たちは押し付けない。
正解を用意することなく、問い続ける。
ただ、創り続ける。
I AM A LIAR.